はじめに
ついに4月5月に入ったけど2026年どうなるかを予想したい。
まずテーマについて。ここ数年AIを独立テーマとして扱ってきたが、もうAIは単独テーマでなくすべてのテーマに組み込まれるものなのでそれを元にテーマを整理した。
おおざっぱに結論は、2026年は「AIを使うかどうか」ではなく、「AIにどこまでやらせるか、やらせるために人間が何を準備するか」が問われる年になると予想する。
またビジネスTierとコンシューマTierは厳密ではない形にした。アプリケーションだけ別の章とする。
テーマ
アプリケーション(SaaS)
ビジネスTier: SaaS is dead - SaaSは滅びぬ。何度でもよみがえるさ。
ビジネスTierでは、いわゆる"SaaS is dead"とAIエージェントが中心になる。
SaaS is deadを改めて説明するとMicrosoft CEO サティア・ナデラ氏が2024年12月に行った発言「業務ロジックがSaaSアプリからAIエージェントへ移るようになる」をIT系メディアなどが(過激に)要約した言葉として始まり、さらに2026年2月のClaude Cowork発表とそれに伴う株式市場におけるSaaS系銘柄大幅下落で話題となった言葉である。
私は今のところまだ大げさな反応と思っている。「202X年、Claude Xが発表された瞬間に世界中のSaaS企業が全て不要になる(dead)」ということではなく、「SaaSの本質が、UIや特定機能から業務データ・権限管理・業務実行に移る」という話だと考える。きっかけであるナデラ氏もそのような趣旨の発言をしている。
ChatGPTがいいインタビューを教えてくれた。Officeや業務アプリがAIエージェントに使われる基盤へ変わるという見方は、この話とかなり近い。
他にもSaaSの嚆矢といえるSalesforceをはじめとする大手ビジネスアプリ企業もそれぞれの文脈でSaaS is deadを否定しAIエージェントを中核におく発言をしている。
Agentforce:AIエージェントプラットフォーム | セールスフォース・ジャパン
ServiceNow エージェンティック・ビジネスのブループリント:ServiceNow
SAP Business AI | AI ソフトウェアソリューション | ビジネス向け AI
オラクル、Fusion Agentic Applicationsを発表 | Oracle 日本
2026年以降のSaaSは以下のように急速に分かれていくと予想する。この分類は厳密なものでなくAI時代に強いものの特徴として便宜的に整理した。
- AIに吸収されやすいSaaS
- ポイントソリューション型SaaS: 議事録作成や要約、資料作成支援のような単一作業のSaaS。最もSaaS is deadの対象になりやすいもの。必ずしも会社組織としての倒産とは限らずAIエージェントに吸収されることも含む。つまりAIエージェントの一機能の裏方SaaSとして生き続ける可能性はある。
- AIで再編されるSaaS:
- System of Engagement(SoE)型SaaS: CRM・SFA・カスタマーサポート・ヘルプデスクなど人間同士の接点を支援するSaaS。大規模な構成変更が求められそう。メール作成、顧客一次対応などAIエージェントが自動化する機能、APIやMCPなどAIエージェントのための機能、顧客マスタや応対履歴データなど引き続き重要な機能と見極めが必要。
ナデラ氏のいう原義的な「業務ロジックがAIエージェントに移る(データは残る)」の文脈に最も合致するSaaSといえるかも。
- System of Engagement(SoE)型SaaS: CRM・SFA・カスタマーサポート・ヘルプデスクなど人間同士の接点を支援するSaaS。大規模な構成変更が求められそう。メール作成、顧客一次対応などAIエージェントが自動化する機能、APIやMCPなどAIエージェントのための機能、顧客マスタや応対履歴データなど引き続き重要な機能と見極めが必要。
- AI時代に中核化するSaaS
- System of Record(SoR)型SaaS: 企業にとって正本となるデータやワークフローをもつSaaS。ERP(会計・在庫管理・購買管理・生産管理)・HR(勤怠管理・人事管理)などを想定。これらはデータやワークフローに価値があるため人間とAI両方にとってより重要な源泉となる。
- System of Action型SaaS: SoRを踏まえて実際の仕事を進めるためのSaaS。ERP自動承認・自動仕訳・自動発注や業務ワークフロー自動実行、Copilotなどの業務横断エージェントのようにAIエージェントに仕事を任せる。
この場合重要となるのはAIエージェントに何をどこまでやらせるか、どこに人間の承認を挟むかという権限ポリシー機能である。 - ガバナンス・コンプライアンス型SaaS: 法規制・監査・契約に関わるSaaS。これは人間が見ること(責任を取ること)に価値があるので意思決定はAIに置き換えられない。
- バーティカルSaaS: 特定業界特化のSaaS。特に日本では法務、医療・介護、不動産、その他士業など規制の厳しい業界を中心に、法規制や行政手続きあるいは商慣習によってAI普及以前から固有の業務フローが発展してきた背景があり、標準的なAIエージェントによる対応が難しいと言える。 またソフトウェアとしてのSaaSだけでなく、SaaS自身の導入支援や設定代行、BPOや運用代行、法制度対応、士業や専門家との接続を含むサービスである場合はAIエージェントでない価値となる。
まずSaaSは2026年中にAIエージェント対応、MCPやAPI対応が最低限求められるレベルとなる。一方でポイントソリューション型SaaSはAIエージェントや大手プラットフォームへの吸収が進む。以下が起きていれば当たりとする。
- 2026年中に、以下Cloud Indexに含まれるSaaS企業の5割以上が「AIエージェント対応」ないし「MCP/API対応」を謳う。
CloudIndex | One Capital, Inc - 5個以上のポイントソリューションSaaSが買収/業務提携によって大手AIの内部機能となる、あるいはサービス終了する。
コンシューマTier: 生活導線のAIエージェント化
コンシューマTierだと、ここ数年注目していたAIスマホやゲームをもう少し拡張して「生活導線のAIエージェント化」という切り口で整理したい。
以下のように技術的には自然言語で全アプリを操作は達成しうるレベルと言っていいがどちらかというと権限問題やアプリ側の制約で止まっている印象。
「OS側のAIに命令してなんでも自動化」のような事業者側とのコンフリクトが起きそうなものよりは生活導線の中で承認された処理「検索」「自動購入」「各種予約」が進みそう。 これまではユーザがスマホ/PCでアプリ/ブラウザを開き、検索し、比較し、予約し、購入していた。2026年はこの一連の操作の全部あるいは一部をAIが引き受ける方向へ進むと思う。 そこでは検索、EC、旅行・飲食店・イベント予約、カレンダーやメッセージのような、日常利用が多くかつプラットフォーム側が制御しやすい領域から進むはず。
以下記事も含めて考えると、特に日本ではChatGPTやGeminiとは別軸で生活導線に組み込まれたAIエージェントが一般利用進みそう。
予想としては、2026年は日本で生活導線上にいる企業、具体的には楽天・LINEヤフー・ドコモ・KDDI・ソフトバンク、あと日本企業ではないが重要なAmazonがそれぞれAIエージェントをリリースすること。
もう少し具体的には単なるチャット止まりでなく、その企業の商品やサービスの利用(検索・相談)の自動化、購入(製品比較・予約・日程調整)の自動化、サービス利用に伴うアプリ横断操作が一般ユーザ向けの実用レベル機能としてリリースされていることとする。
検索・相談・要約の補助止まりで、「実行」をしてくれない場合は外れとする。
インフラ(IaaS/PaaS)
これまではSMB中心のクラウド化、移行という話で進めていたがそれだけの話でなくなってきたので少し変えたい。アプリケーションとしてのクラウド(SaaSレイヤー)は上で話したので、もう少しインフラとしてのクラウド(IaaS/PaaSレイヤー)をこの項目で予想したい。
2026年のクラウドは、AIをどこで動かすか、自分たちでどこまで触れるのか、運用はどこのだれがするのか、データをどのリージョンに置くかという、ある意味オンプレ時代には当たり前に考えていた部分に改めて目が向けられるようになると考える。これはビジネスや技術の話もあるが昨今の国際社会ないし地政学の部分が大きいと思っている。
ビジネスTierではソブリンクラウドの文脈がかなり強くなっている。ガートナーは2026年の世界のソブリンクラウドのIaaS支出が800億ドルで前年比35.6%増と予測している。
ソブリンクラウドはざっくりいってヨーロッパがアメリカ一強のクラウド業界に対抗するような形で始まったと思っている。日本だと「日本国内で運用が閉じる」という方向でOracleとか、さくらインターネットが力を入れている印象。
日本では、ガバメントクラウドに加えて行政機関のSaaS調達を変えるDMPも重要になりそうだ。ガバメントクラウドはIaaS/PaaS寄りの基盤の話、DMPはSaaS調達の話であり、厳密には別物だが、どちらも公共領域におけるクラウドを利用するまでの動きとして見ている。
あとAI関係だと電力も無視できない。電力供給やエネルギー価格がボトルネックとなる可能性は十分にあり得る。石油危機で日本のAIは停止しますなんてなったら目も当てられない。
2026年のクラウドは、以下の3つが主な論点になる。
- ソブリンクラウド。特に公共・金融・医療・その他インフラで、データの所在や運用主体、法域がより強く意識されそう。
- ガバメントクラウド。DMPで公共領域もクラウド利用に強く舵を切るといえそう。
- AIインフラとしてのクラウド。GPU、データセンター、電力が重要になる。
予想としては2026年中に、非ITの全国区のTV/新聞メディアで「ソブリンクラウド」「ガバメントクラウド」「AIデータセンター」この3つの単語をそれぞれ含むニュースが出てくる。(1つの記事で3つでるか、3つの記事になるかは問わない)
コンシューマTierの文脈では表に見えるのはクラウドゲーム・スマートホーム・スマートカー・ウェアラブル機器あたり。AIインフラ中心に裏方を支えるのがエッジコンピューティングか。
正直このあたりは2026年で劇的に進む印象はない。
SRE/プラットフォームエンジニアリング/Dev(Sec)Ops
この領域も去年も書いたが、これは1年で劇的に定着するものではなく、少しずつ定着する性質のものだと思う。 ただし、2026年はAIがらみでこの領域の重要性は説明しやすくなりそう。AIがデータ消してしまった、AIにAPIキーを漏らしてしまったという話が出つつある。
いかに安全にAIを乗りこなすかがこれらの組織に求められるものになってくるはず。そこで2026年のSRE/プラットフォームエンジニアリング/DevSecOpsは、以下を含むAI時代のAIガバナンスや法規制を実運用に落とし込む組織として再定義されるだろう。
- AI生成コードを安全にレビュー、テスト、デプロイする仕組み
- AIエージェントが社内システム(本番環境含む)にアクセスする際の権限管理
- AIの利用量およびコスト管理
- 監査ログ、シークレット管理
- AIを安全に使うための標準環境キッティング
東証プライム/スタンダードで上記を謳う組織の事例が5以上出ると予想。
こんな感じで。












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